ケア・コンパクトシティ研究会

出版物

2025年、高齢者が難民になる日 ケア・コンパクトシティという選択

団塊の世代すべてが後期高齢者となる2025年、大量の「介護難民」が発生すると言われる。この事態に私たちはどう向き合うべきか。誰もが、いつまでも暮らしやすい地域はどうすれば実現できるのか。医療・福祉、地方自治、「まちづくり」のあり方など、様々な視点から考え、人も、地域も甦らせる「ケア・コンパクトシティ」という解決策の真髄に迫る。

本書の目次より

  1. はしがき
    誰もが、いつまでも暮らしやすいまち
  2. 第1章
    幸せな老後は、どうすれば実現できるのか
  3. 第2章
    日本の医療と介護に、何が起きているのか
  4. 第3章
    地域を、医療・福祉を誰が「経営」するのか
  5. 第4章
    まちづくりはヒューマンスケールで
  6. 第5章
    地域の共同体マインドを共有する
  7. 第6章
    「ケア・コンパクトシティ」が日本を救う
高齢者が難民になる日

研究会に関して

研究会の問題意識・目的

 少子高齢化や人口減少のスピードは想像以上にはやい。団塊の世代が後期高齢者となる2025年には、要介護や認知症の人の割合が高い後期高齢者(75歳以上)が約2200万人となり、高齢化率30%を超える。また、首都圏などの都市部では介護難民となる後期高齢者が急増し、2040年には全国で半分の自治体が消滅危機に瀕することが予測されている。しかも、少子高齢化の急速な進展に伴い、社会保障費は膨張し、日本の財政赤字は拡大する傾向にある。
 つまり、これから日本は、「都市部で急増する後期高齢者と介護難民」「社会保障費の膨張に伴う財政危機」「人口減少に伴う地方消滅」という3つの大きな問題に直面する。我々はこの問題をどう乗り切ればよいのか。当然に答えは1つではないが、解決に向けた何らかの「羅針盤」が必要である。このような問題意識に基づき、株式会社アバンアソシエイツの協力を得て有識者を中心とする研究チームを結成し、2013年から「地域包括ケアの「サービス体制」及び「空間」のあり方に関する研究会」を随時開催して、そのヒントを探ってきた。
 本書「2025年、高齢者が難民になる日 ケア・コンパクトシティという選択」は、研究会の成果の一部であり、解決策の方向性は、人口集約を図る「コンパクトシティ」と、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する「地域包括ケアシステム」との融合、すなわち「地域包括ケア・コンパクトシティ」(略称ケア・コンパクトシティ)構想である。老齢世代のみならず、若い世代や将来世代が「夢」や「希望」をもって暮らすことができる日本を創り出すためにも、持続可能な制度や仕組みを構築する必要があり、本研究会はそうした提言等を行うものである。

研究会メンバー

  • 小黒 一正

    小黒 一正
    (おぐろかずまさ)

    法政大学経済学部教授。京都大学理学部卒、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。1997年 大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4 月から現職。鹿島平和研究所理事。専門は公共経済学。著書に『2020年、日本が破綻する日―危機脱却の再生プラン』(日経プレミアシリーズ)など多数。

  • 小林 航

    小林 航
    (こばやし・わたる)

    1974年生まれ。博士(経済学)。千葉商科大学政策情報学部准教授。公共経済学を専門とし、大学では日本経済論、地方財政論、金融システム論などを担当。財務省財務総合政策研究所特別研究官、東京都税制調査会委員、市川市市政戦略会議委員なども務める。

  • 武内 和久

    武内 和久
    (たけうち・かずひさ)

    1971年、福岡県生まれ。大手コンサルティングファーム所属、元厚生労働省室長。東京大学法学部卒業後、22年間にわたり厚生労働省で政策企画立案(医療・福祉・年金・雇用)、在イギリス日本国大使館一等書記官、マッキンゼー・アンド・カンパニー等を経て、現職に至る。東京大学非常勤講師、厚生労働省保健医療2035推進参与等を兼務。著作に『公平・無料・国営を貫く英国の医療改革』(集英社新書)など。

  • 吉竹 弘行

    吉竹 弘行
    (よしたけ・ひろゆき)

    1952年生まれ。千葉商科大学人間社会学部教授、一般社団法人シルバーサービス振興会監事、福祉住環境コーディネーター協会理事、社会福祉法人剏生評議員、一般社団法人シニア社会学会運営委員。東京工業大学大学院修了(博士〈学術〉)、東京大学医療政策人材養成講座修了。柔道整復師。鹿島建設株式会社病院経営支援室長、同有料老人ホーム子会社ヒューマンライフサービス株式会社社長、シルバーサービス振興会主席研究員、社会福祉法人黎明会参与等を歴任。

  • 山崎 敏

    山崎 敏
    (やまざき・さとる)

    1950年生まれ。修士(工学)・一級建築士。トシ・ヤマサキまちづくり総合研究所代表、神奈川県立福祉大学、工学院大学などで非常勤講師、調査研究を通じた医療福祉施設の設計・コンサルタント、日本医療福祉建築協会理事、厚生労働省、財務省、文部科学省、港区、中野区、杉並区等各種委員会委員等を歴任。

  • 尾﨑 雄

    尾﨑 雄
    (おざき・たけし)

    1942年生まれ。ジャーナリスト、老・病・死を考える会世話人、NPO法人コミュニティケアリンク東京副理事長、公益財団法人さわやか福祉財団評議員、日本記者クラブ、日本医学ジャーナリスト協会会員。早稲田大学政治経済学部卒、東京大学医療政策人材養成講座修了。日本経済新聞社・流通経済部、婦人家庭部、日経ウーマン編集長、日経事業出版社取締役、仙台白百合女子大教授等を歴任。

株式会社 アバン アソシエイツ

 (株)アバンアソシエイツは、鹿島グループの都市計画コンサルタント子会社であり、本研究会におけるスポンサー役となっている。同社は、近年は、社会的課題を解決する「まちづくり」を標榜し、①新産業の創出、②社会保障給付の効率化、③小さい政府・地方分権、④自然災害リスク・マネジメントを活動領域と定め、月次開催のアバン・フォーラムにおいてこれら領域の識者を招聘し社外人脈を形成する傍ら、今般の様に研究会を運営し、政策提言等も行うとともに、従来からの業務である都市計画・まちづくり等のコンサルタント業務におけるソリューション開発にも勤しんでいる。

ケア・コンパクトシティ

 ケア・コンパクトシティは、医療・介護や生活に必要なサービスを、集約的で質の高い住まいや地域の空間のなかで、効率的かつ効果的に提供するという考え方である。また、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられることは重要であり、ここでは3つの地域のパターンを取り上げ、「その人らしく最期まで」暮らしを実現できる住まい・まちの姿として「ケア・コンパクトシティ」のイメージを示している。

ケア・コンパクトシティのイメージ

  • ケア・コンパクトシティ(都市部立地型)

    ケア・コンパクトシティ
    (都市部立地型)

     東京など大都市圏における都市部で、ケア・コンパクトシティを構築する場合のイメージ。医療・介護関係の施設、店舗や利便施設など生活支援のサービスを提供する施設、またバリアフリー対応等の高齢者向け住居も含み、多世代型居住にも寄与するようなるべく多様なバリエーションを持った住宅を、縦に積んでいくようなかたちとなる。

  • ケア・コンパクトシティ(住宅地拠点型)

    ケア・コンパクトシティ
    (住宅地拠点型)

     大都市圏の郊外部や地方都市などの住宅地ケア・コンパクトシティ(住宅地拠点型)、スーパーやショッピングセンターまた病院など地域のなかの“核”となるような施設が所在するエリアにおいて、ケア・コンパクトシティを構築する場合のイメージ。介護関係の施設や生活支援のサービスを提供する施設、高齢者向け住居等を含む多様なバリエーションを持った住宅などを、そうした“核”となる施設になるべく近接し立地させていくようなかたちとなる。

  • ケア・コンパクトシティ(郊外ショッピングセンター近接型)

    ケア・コンパクトシティ
    (郊外ショッピングセンター近接型)

     地方都市のなかでも比較的郊外部、あるいは農村部等のエリアにおいて、郊外型のショッピングセンターが立地しているような場所を利用しケア・コンパクトシティを構築する場合のイメージ。ショッピングセンターが持つ、買い物のためだけでなく趣味・カルチャー等を含めたサービスの提供や、回遊等も楽しめる特性を活かし、その近辺に医療・介護関係の施設、高齢者向け住居等も含めた住宅を立地させていくことで、なるべく住み慣れた地域に近い場所で、その人らしく最期まで暮らしを実現できる住まい・まちを形成させていく。